DIG the ACT vol.3
ADAM ET ROPÉ HOMMEから今季、新たなラインがローンチします。それが『ACT(アクト)』。都市生活を優雅に、快適にクルーズするための機能やフォルム、ディテールを引っ提げたコレクションです。
随所に取り入れたのは、世界的にも指折りのアメリカの羽毛サプライヤー、ALLIED FEATHER + DOWN(アライドフェザーアンドダウン)社のALLIED FEATHER(アライド・フェザー)。今回紹介するのは、その素晴らしさが存分に感じられる3つのアウターです。
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都市で着るアウトドアウェアの理想型
vol.2では、ロンドンから着想を得た「20番台」の一着を紹介しました。ALLIED FEATHER(アライド・フェザー)を封入した着脱可能なネックウォーマーを装備したアノラックは、寒い日だけでなく雨天時にも頼もしい存在といえます。ただ、その際には触れていませんでしたが、実は双璧をなすもうひとつの有能なアイテムが。それがこのマウンテンパーカです。
ご存知の方もいるかもしれませんが、数シーズン前、ADAM ET ROPÉでは珍しくマウンテンパーカを秋冬のラインナップに加えたことがありました。その反響は我々の想像を上回るもので、当時のアイテムをリファレンスとしながら、ACTとしての機能を付与した逸品に仕上げています。ロンドンのアビー・ロードから着想を得たカルチャーを感じさせるデザインが秀逸です。
仕立ての土台となっているのは当時のモデル。山着らしからぬ姿からそれも納得ですが、ここは是非ともフロントラインにご注目を。
ファスナー間から覗くのは着脱可能なダウンベストです。マウンテンパーカへさらにダウンベストと聞くとアウトドアの印象が強く感じるかもしれませんが、双方ともに上品な生地を採用しているため街との親和性は言わずもがな。それでいて、表地はソフトな風合いと撥水性を兼ね備え、裏地はハリ感があるためパリッとしたシルエットを演出する両A面仕立てです。
山着でありながらとことんモダン。その趣を演じられる理由はなにも生地ばかりではありません。アウトドアウェアでは見られないカッティングの遊びにもADAM ET ROPÉの持つモードのこだわりが随所に見受けられます。ヨークの独特な切り替えはその際たる例。外からは見えないよう考え抜いたダウンベストの接合部やドローコードを埋め込み式にするなど、スマートに見せる技をそこかしこに散りばめています。
フードのフォルムにもこだわりを込めました。ご覧のように、上部をキャップのツバのように婉曲させ、ジップを上まで閉じれば風の侵入スペースを狭めることができる構造に。とはいえ、視野を確保する工夫も施しているため安全性や快適性は担保されています。
リバーシブルの二面性によりコーディネートをもっと楽しく
「01-09番」「10番台」「20番台」「30番台」と、それぞれのカテゴリーによって特徴が異なること、そのアイデアは世界中の都市から、モデル名は各都市の通称道路名やエリアからとられていることはすでに述べた通りです。そして、ファーストコレクションのラストを飾る「80番台」はリバーシブルシリーズ。アイデアの源流はパリになります。
考え抜かれた糸で織り上げた生地を使用しているゆえ、ご覧のように機能と美しさを両立。山のイメージが強いアイテムではありますが、街に溶け込む素養を十分に備えています。
さらには、表と裏でまったく印象の異なる色を採用しました。そのうえ、片面はあえてダウンキルトをオモテに出したクラシカルな3層構造のカジュアルなルックス、もう一方はマットな生地かつ極限までステッチを排した洗練さが際立つ佇まいにすることで表情を差別化。それにより、幅広い着こなしを可能にしています。
そして、表面の盛り上がりからもお分かりいただけるでしょう。こちらではALLIED FEATHER(アライド・フェザー)をこれでもかと充填しました。とはいえ、前立てを細めに仕上げているためすっきりとした印象です。
冬の寒さがやわらいでいる昨今、軽めのコートの上からダウンを重ねるといった着こなしも一般的となりました。その機運に乗るかのごとく、全体を程よいオーバーサイズに、アームホールを広めに仕上げています。ただ、アームホールを広めに設定しますとややだらしなく見えがち。ところが、アームホール下部にゴムを入れることでその不安も解消しています。
軍アウターがベースながら、その実、趣はエレガント
アウター一着にかかる金額を考えれば、一粒で二度美味しいアイテムはありがたいもの。先述したように、その期待に答えるのが「80番台」です。中でもとっておきとなるのが、こちらのミリタリーアウター。
ベースにしたのは誰もがよく知る軍アウターの大定番、M-51。その起源は、1950年代に作られた米軍の防寒着であることは周知の通り。ただ、同コレクションで一貫して採用している生地を使い、軍アウターらしからぬ見た目に仕上げました。
もちろん「80番台」の一着ゆえリバーシブル仕立て。オフホワイトにネイビー、ブラックにシルバーグレーと、コントラストのついた配色に加え、一方はラグランスリーブ仕様でスタイリッシュな見た目、もう一方はセットインスリーブかつ縫い目にパッカリングを出したことでカジュアルな佇まいです。ガラリと印象を変えられるため、片面にばかり袖を通してしまうといった“リバーシブルあるある”に陥ることはありません。
両面仕様ではありますが、腰ポケットにつけた袋布はひとつのみ。それゆえ、どちら側を着用してもプロポーションは保たれます。表裏からアクセスできる使い勝手も嬉しい要素。しかも、ウエストのドローコードはどちら側で着ても外から見えないようポケット内に隠すといった、ADAM ET ROPÉ HOMMEならではのディテールの妙も光ります。
裾はM-51でもお馴染みのフィッシュテールデザイン。それゆえ足捌きのしやすさは街での移動のしやすさにもひと役買ってくれることでしょう。