【SPECIAL INTERVIEW】タオル織機の技法で作られたsanaの魅力とは
2022.03.28
タオル織機でしか表現できない生地をベースに、
心地よく機能的な天然繊維でもの作りを行っているデイリーウエアブランド「sana(サナ)」。
今季、ADAM ET ROPÉとの初のコラボレーションが実現。
sanaデザインチームへのタオル織機で生産するウエアの魅力や、環境をより良くする為の取り組み、日々のインスピレーション元などのスペシャルインタビューと共に、sanaの魅力をお届けします。
【sana for ADAM ET ROPÉ】
セットアップはブラック、オールインワンはブラウンの色別注。【その他LINE UP】
■sanaのコンセプトを教えてください
sanaというブランド名は、サンスクリット語で「最も短い時間・この瞬間を表す刹那」という意味を持つ言葉「Ksana:クシャナ」を元に作った造語です。
ブランドコンセプトは、「過去や未来にこだわらず、今この一瞬一瞬を大切に過ごしたい。
明確なライフスタイルを持った女性を思い描き、素材に寄り添ったデザインで、着る人の暮らしに溶け込んだエイジレスなデイリーウエアの提案。」です。
■なぜ今治タオル生産の技法に注目したのですか?
2006年頃から、都内でテキスタイルからオリジナルで生産するスタイルでアパレル業を営んでいました。
その時に、生まれ故郷である今治のタオル織りに興味を持ったことがきっかけです。 昭和38年から稼働し大切に受け継がれてきた今治製の古いシャトル織機や最新の織機を地元の工場の方々に拝見させていただき、織機自体に惹かれました。
勉強していく過程で、今治の水は不純物が少なく良質な軟水に恵まれている為、糸に柔らかさを与えタオル製造にとても適している事を学びました。 私達がアパレル業で積んだ経験を融合させたら、タオル織機に新たな可能性が広がるのではないかという気持ちに高揚したのを今でも覚えています。
その時に、タオル織機を使って洋服専用の生地を開発する事を決め、今に至ります。
当時はタオル織機で織り、強度等の基準をクリアしている洋服用の生地は見たことがなく生産過程の問題が非常に多かったのです。
試作の段階からすでにタオル織機でしか織れない、他のどの生地とも違う独特の風合いや肌触りがあり、そこにも更に魅かれました。
今治の工場の関係者の皆様のご協力のもと、試作や改良を繰り返しブランド化することが実現しました。
■今治タオルの技法を使用するメリットはなんですか?
タオル織機は二本の経糸と一本の緯糸で構成されているのが特徴で、経糸二本の内一本がパイル(ループ)を作る為の経糸です。
タオルの製造に必要なこの原理をテリーモーションと言います。
sanaの生地はそのテリーモーション技術のある織機でパイルを出さずフラットな表面に仕上げています。
ですので、タオルの特徴である吸水性と柔らかな肌触りはそのままに、着心地が抜群に良いウエアに仕上がっています。
また、汗ばむ夏は吸水性と乾きやすい生地をメインに。冬は、厚地のタオル特有のふんわり感を生かした柔らかく暖かい生地を、織り方や糸選びで多様な素材を作ることが可能です。
■服作りの工程でサステナブルな取り組みもされていると伺いました。詳しく教えてください。
今治タオル工業組合と紡績会社によるプロジェクト、アップサイクルシステム「LooPlus(ループラス)」に参加しています。
服やタオルを作る時に出てしまう“裁断くず”の発生率は約15%と言われており、7着作ると1着分に相当する“裁断くず”が出る計算です。
再利用されない“裁断くず”は今まで大量に廃棄処分されていました。
LooPlusではその裁断くずを各会社から集め、紡績会社の技術とアイデアで開織・反毛し、新たな糸や、紙製品やプラスチック製品へと生まれ変わります。
再生された糸を衣類用生地の糸や、タオルの糸に使用し再び製品にするなど、資源を無駄なく活用する事を心がけていきたいと思います。
■温かみのある生地だけれど、クリーンで洗練された印象をsanaの服には感じます。インスピレーション元はなんですか?
服をデザインする上での主役は素材だと考えています。独特な味わいを持った素材と向き合って、この生地をどんな感じで着たいのかを考える事から始めます。
余計なデザインはせず普遍的なアイテムに少し今の気分を加えながらイメージを膨らませます。
もう一つ大切にしていることは、着る人によって完成される服である事です。
sanaの服には決まりがありません。様々な着方を様々なシーンで自由に楽しんでいただける服でありたいと考えています。
■今回のADAM ET ROPÉとの別注商品の魅力を教えてください。
セットアップに使用しているリネンとツイル生地は、柔らかなコットン経糸に、リネンの別注Blackのトップ糸を打って織り上げた綾素材で、タオル織機の経糸が2本ある仕組みでなければ表現出来ない特殊な組織の素材です。もう1つのオールインワンに使用しているヘリンボーン生地は、sanaの定番的な素材です。
独特の凹凸のある質感と、洗い晒しでも様になる風合いが特徴で、タオル生地なので水分を吸収しやすい特徴から、独特なブラウンを表現しました。
■昔チームメイトのお一人がADAM ET ROPÉで働いていたそうですね。
1993年頃、ADAM ET ROPÉ HOMMEがローンチし間もないタイミングで採用して頂き、約3年半海外への買付業務やショップマネージメント業に携わらせて頂きました。貴重な経験を積ませて頂き、たくさんのことを学びました。
■「過去や未来にこだわらず、この一瞬一瞬を大切に過ごしたい」というコンセプトが素敵ですね。デザイナーさんが日々の生活で大切にしている瞬間はなんですか?
日々の生活では自分が心地よい家族や友人と過ごす時間ももちろん大切にしていますが、少しでも自分の好きなことに向き合える時間も持てるように心がけています。■今治の魅力・お気に入りスポットを教えてください。
今治の魅力は、豊かな自然に恵まれていて、海、山、川、すべてがバランス良く町に近く、幼少期の頃から、様々なロケーションの自然の中で遊び、多くを学びました。今考えると贅沢な環境であり魅力だなと感じます。今でも時間があると友人と海釣りに行ったり、山にキャンプに行ったり、湖にボートを出してバス釣りをしたりして、ゆったりと過ごしています。
食べ物では焼き鳥がとても有名で、名店も多く、遊んだ後は行きつけのお店に友人と集まっています。